こんにちは!ちーたらのパパです。
メーカーで勤務していた頃、新たな知識を吸収すべく、お昼休みやスキマ時間にスマホをいじるのではなく読書をすることを始めました。
法律事務所に復帰した現在も、弁護士(特に若手)の皆さんが自分らしいキャリアを歩めるように、また、法律事務所の組織そのものをより良い組織にすることで、そこで働く人がやりがいを感じられるように、サポートすることをミッションを実現するために、法律分野に限らず、新たな分野の知見を得るために、様々な分野の本を読むようにしています。
僕の掲げるミッションについて、詳しくはこちらをご覧いただけると嬉しいです!
このブログでも、僕が読んだ本の紹介とそこから得られた気づきなどを紹介していきます!
今回は、こちらの本を紹介します!
あらすじ
本書は、リクルートを経て独立されたのち、「組織・人材開発」の分野で100社を超える企業と関わってこられたという由井俊哉さんの著書です。
本書では、マネージャーがぶつかる「部下との間に信頼関係がない」といったチーム内の下記の症状を「5つの壁」に整理した上で、この「5つの壁」を解消するために、1on1を活用すること、そしてそれを実践していくための1on1のスキルや対話の「型」が紹介されています。
- 安心して話せないから、上司と部下の間に信頼関係がない
- 課された目標の意味がわかっていないから、主体性のないメンバーばかり
- フィードバックがうまくできていないから、問題が起こっても自分で解決できない
- 経験学習のサイクルが回っていないから、学びが活かされず、何度も同じ失敗をする
- 部下の動機の源泉(内的キャリア)がわかっていないから、期待をかけても成長しない
ちなみに、そもそも、「1on1」とは何かについては、本書の著者の出身企業リクルートマネジメントソリューションズのHPでは、次のように紹介されています。
1on1ミーティングとは定期的に部下と上司が1対1で行う面談(対話)のことで、近年導入する企業が増えています 。
リクルートマネジメントソリューションズ「人材育成・研修 お役立ち情報・用語集」HP(https://www.recruit-ms.co.jp/glossary/dtl/0000000201/)
また、最適な目標を設定して部下と上司が共有する「目標設定面談」、設定した目標に対する進捗状況を振り返り、後半の目標や課題を確認する「中間面談」、評価結果を伝え、次期の目標や課題を明確化する「評価面談」 などとは区別されます。
人材育成のための施策として、新聞やニュースで目にする機会も増えましたよね。
僕自身は、メーカー勤務を経て、現在所属する組織(法律事務所)に復帰する中で、若手の弁護士のみならず事務員の皆さんが何を考えているのかわからないことを不安に思い始めていました。
言葉にするのは難しいのですが、なぜメンバーはこの組織にいてくれるのかが(明確には)わからず、ちょっとしたきっかけで組織が瓦解してしまうのではないかという漠然とした不安を今も抱えています。
その中で組織内の風通しを良くするために1on1を導入し、まずはメンバーの話を聞いてみようと思い立ち、少しずつ実践し始めています(僕の実践している1on1については、別の機会にご紹介したいと思っています。)。
とはいえ、1on1どころかマネジメントの経験もないことから、何か参考になればと思い、書店に並ぶ1on1に関する本の中から手に取ったのが本書でした。
本書から得られた気づき
本書を読んで特に印象に残ったポイントを3つご紹介します。
①スキルよりもスタンスが重要
本書では、後でも少し触れる通り、効果的な1on1に求められるスキルがたくさん紹介されています。
他方で、こうしたスキル以上に、適切なスタンスを身に付けることが重要であると強調されています。
そして、この適切なスタンスを実現するために、「目の前の相手の可能性を信じること」と、「安心・安全な場所をつくること」が必要であると述べられています。
(1)目の前の相手の可能性を信じること
このうち1点目については、「『目の前の相手=メンバーが、可能性のある人であり、その可能性を引き出すための支援をしよう』と考えることが大前提」とも述べられており、当たり前のことだと思いつつも、特に現在僕のいる弁護士業界では抜け落ちてしまいがちな視点のように感じました。
具体的には、法律事務所では、所長やボスとなる弁護士がいて、その指示の下で仕事をする事務員(と事務所によってはアソシエイト弁護士という雇われの弁護士)がいるという組織形態が比較的多いと思います。
この中で、特に事務員さんについては、仕事上、弁護士の指示を正確にこなすことが求められることもあり、あまり自律的・主体的に動くということが期待されていないように感じます(一般の会社でいえば、総務や庶務部門の人と状況が近いかもしれません)。
そして、この点こそ、僕が法律事務所に復帰する中で、特に違和感を感じた部分でもあります。
たとえ事務仕事に従事している人であろうと、それぞれが大事にしている価値観に基づいて日々仕事に取り組んでいらっしゃるはずです。
そうであるならば、皆さんが大事にしている価値観を踏まえ、日々のコミュニケーションやフィードバック、人事評価等を行っていきたいと考え、現在1on1という取り組みを始めたところです。
僕としては、本書で紹介されている1on1のスキルや型を取り入れながら、今いる組織をより良くしていきたいと思っていますので、こうした取り組みについては、改めて紹介していければと思っています。
(2)安心・安全な場所をつくること
また、2点目については、最近流行りの「心理的安全性の高い職場」のことを指していると理解しました。
心理的安全性の重要性については、その提唱者であるエイミー・C・エドモンドソンの『恐れのない組織――「心理的安全性」が学習・イノベーション・成長をもたらす』(Amazon)でも、心理的安全性は高い成果を上げる職場環境の土台であると述べられています。
僕自身、心理的安全性というワードが世間で言われるようになった頃から、この『恐れのない組織』を始めいろいろな本を読みましたが、やはり、組織をより良くするためには重要な要素なのだなと思います。
この点については、『恐れのない組織』の紹介も併せ、改めて紹介できればと思っています。
②コーチング・ティーチング・フィードバックを使い分ける
2つ目は、効果的な1on1のためには、コーチング・ティーチング・フィードバックを適切に使い分ける必要があるという点です。
ちなみに、本書では、このコーチング・ティーチング・フィードバックのそれぞれについて、次の通り、定義されています。
- コーチング
問いかけを中心とした対話を通して、相手が自らアイデアや選択肢に気づき、自発的な行動を起こすことを促す関わり - ティーチング
こちらが持つ情報で、相手が知らない知識・スキル・経験などを教える関わり - フィードバック
相手の成長を促すために、結果や周囲からの見え方などの現状に関する情報をタイムリーに伝える関わり
この点については、本書でも、「1on1では自分の考えを言ってはいけない」と誤解している人がいると紹介されているように、僕自身、1on1では自分の意見を述べたりせず、ただひたすら相手の話を聞くべきだと思っていました。
もちろん、1on1では、極力、マネージャーの側は「聞き役に徹することが原則」ではあるのですが、絶対にしゃべってはいけないというのは極端で、状況によっては、自分の知識や経験を伝えるティーチングやフィードバックを組み合わせることで、より効果が出てくると知り、今までは硬く考えすぎていたのかもと気持ちが楽になりました。
もっとも、1on1は、「メンバーのための時間」であって、「話す量は相手が8割で、自分は2割くらい」と述べられているように、「聞き役に徹することが原則」という点は、忘れてはなりません。
今後、1on1を実施していくにあたっても、この2点は意識していきたいと思います。
コーチングに求められるスキル
さらに、本書では、上記の3つのうちコーチングとフィードバックについて具体的なスキルが紹介されており、コーチングについては、傾聴・質問・承認の3つに分けて紹介されています。
キャリアコンサルタントとしては、いずれも馴染みのあるスキルではあるものの、以下の点については改めて勉強になったと思いましたので、いくつか紹介します。
傾聴ー相手の話を評価、判断、否定せずに、最後まで聴いて受け止める
キャリアコンサルタントの講座等でも、傾聴が重要だということは繰り返し教えられましたが、1on1・コーチングでも、傾聴は最も重要なスキルの一つだと紹介されています。
そして、そのポイントは、「相手の話を評価、判断、否定せずに、最後まで聴いて受け止める」こととされています。
キャリアコンサルタントとして登録している身として、さすがに、相手の話を途中で遮ったり、「でも」などと否定語で相手の話を返したりということはなくなりましたが、今でも、無意識のうちに相手の話を「評価」してしまったなと反省する場面はあります。
例えば、相手がある経験や思いを話したのに対して、「(あなたがそう思うのも)当然だと思います。」などと評価して返してしまうという具合です。
キャリアコンサルティングにせよ、コーチングにせよ、相手の話をまずはしっかり受け止めるというのは、基本中の基本ですので、この点は、改めて意識しなければと思いました。
質問ー質問の仕方が回答を規定する
キャリアコンサルタントの講座やその後の試験勉強では、経験代謝を通じて、自分自身のありたい姿に気づいてもらうよう働きかけるということを学びましたので、現在行っている1on1でも、この点を意識しています。
本書でも、オートクライン効果というコーチング用語が紹介されているように、1on1の目的の一つは、メンバーが言語化することによって自分の考えに気づくことにあると理解しています。
オートクラインとは、元々は生物学用語で自己分泌のことですが、コーチング用語としては、「自分が発言した内容を自分の耳で聞くことで、今までに自分が気づかなかった自分の考えに気づけるようになる」ことを指す言葉として使用されています(コーチング道場HP参照)。
ただ、実際に1on1を行う中で、この点を意識するあまり、誘導的な質問・問いかけをしてしまうことがあるなと感じるようになりました。
さすがに、「あなたは○○がしたいのでは?」みたいなあからさまな誘導的な質問・クローズドクエスチョンをすることはありませんが、内省を深めてもらおうと意識しすぎて、やや唐突・不自然な質問をしてしまっていることはあるように思います。
本書でも、上記の「質問の仕方が回答を規定する」、つまり、「自分がこういう答えが欲しい、と思えば、質問は誘導的になっていく可能性」があると述べられているように、1on1を実践するにあたって、注意したいポイントです。
質問ー過去のネガティブな事象に「なぜ?」と聞くのはNG
この点も、キャリアコンサルタントの講座等で勉強する中で、「なぜ?」という質問は、相手が非難されているように感じることがあるということは、知識としては知っていました。
でも、実際に、1on1をやってみると、相手が何らかの事象を経験したという話をしたときに、つい「どうしてですか?」などという質問をしていることが多いなと感じています。
この点は、自分自身の中で、仕事の一環として面談をしている以上、事象とその原因を分析しないといけないと、どこかで考えてしまっているのかもしれないなと思います。
現状、「なぜ?」という質問をしたことで相手が委縮してしまい、そこから話が続かなくなったということはないと思うものの、「なぜ?」という質問をきっかけに、信頼関係が崩れ相手が殻に閉じこもってしまうことも十分考えられますので、もっと良い問いかけを身に付けたいと思っています。
③フィードバックの重要性と難しさ
1on1は成長を促すためのもの
本書では、フィードバックについて、「相手の成長を促すために、結果や周囲からの見え方などの現状に関する情報をタイムリーに伝える」関わりとして紹介されています。
そして、マネージャーに対して、このフィードバックを通じて、メンバーの抱える課題解決をサポートし、業務を前に進めることが求められると述べられています。
僕自身は、上述の通り、1on1やコーチングに対して、相手の話を聞くだけという誤ったイメージを持っていたので、1on1において、マネージャーの側から積極的にフィードバックをする必要があるというのは意外な気づきでした。
そもそも、自分の性格として、相手の改善点を指摘するということが苦手であることから、無意識のうちに、そうした関わりを避けてきた面もあるように感じます。
本書を読み、1on1はチームをマネジメントするための手段である以上、業務を推進し、さらには相手の成長を促すために、時にはフィードバックが必要になるのだと、はっきり理解できました。
フィードバックのためのスキル
そして、本書では、上記の意義を持つフィードバックを行うためのスキルについても、紹介されています。
特に参考になったのは、SBIというフレームワークとシナリオ作りです。
まず、SBIというのは、Situation(状況)・Behavior(言動)・Impact(影響)のことを指しており、相手に対して、フィードバックしたい事象について、SBIに従って、整理して伝えるというフレームワークです。
このSBIフレームワークを活用することで、ネガティブなフィードバックも、ポジティブなフィードバックも端的に伝えることができると紹介されています。
また、シナリオ作りについては、特にネガティブなフィードバックをするときは、相手にとって耳が痛いことを伝える必要があるため、マネージャーの側としても気が乗らないものです。
だからこそ、さっさと済ませてしまおうとか、何とかなるだろうと思って、その場の勢いでフィードバックしようとして失敗してしまうケースを、著者自身何度も見てきたそうです。
こうした失敗を避けるために、あらかじめシナリオを作るなどして練習をしておくことが重要だと述べられていて、とても納得できました。
フィードバックについては、つい最近僕自身苦い経験をしたこともあり、今後、フィードバックを行うときは、ぜひこのフレームワークとシナリオ作りを活用したいと思います。
【僕の失敗談】
先日、今所属している組織のメンバーに対して、ネガティブなフィードバックをしたものの、全然うまく行かなかったという経験をしましたので、少しでも参考になればと、シェアしたいと思います。
発端は、あるメンバーが他のメンバーに対して、不適切な言動を行ったことでした。
そのことに対して、組織として、マネージャーとして、ネガティブなフィードバックをする必要があるだろうということで、そのメンバーと1対1での面談を行いました。
このときはまだ本書を読んでいなかったこともあり、自分流のやり方で、相手に対して、改善すべき点などを伝えたのですが、本人に伝わっているのか半信半疑のまま、フィードバックのための面談を終えました。
実際、後で別の人から聞いたところでは、本人もあまり納得できなかったという趣旨のことを言っていたそうで、うまく行かなかったんだな…とショックを受けました。
面談後しばらく経ってから本書を読むと、相手への承認や期待を伝えられていなかったり、一方的なフィードバックになっていたりと、フィードバックで求められるスキルが全く使えてなかったんだなと反省しました。
また、今思えば、今回フィードバックを行ったメンバーとは普段あまり仕事で話をすることがなかったこともあり、そもそも、信頼関係を構築することができていなかったなとも思っています。
本書でも、「フィードバックは、言われている中身以上に言っている人の影響を受けますから、信頼関係がないと受け入れがたい」と述べられている通り、効果的なフィードバックをするには、まず信頼関係の構築が最優先だと肝に銘じたいと思います。
余談ー中原淳教授のお話しとの共通点
本書の紹介からは脱線してしまいますが、本書を読んでいたのとちょうど同じ時期、人材開発・組織開発で有名な立教大学の中原淳教授の『「対話と決断」で成果を生む 話し合いの作法』(Amazon)という本をAudibleで聴いていました。
しかも、同じタイミングで中原教授が1on1についてのセミナーをされるということで、早速視聴しました。
いずれの内容についても、本書と親和性のあるものだと感じましたので、ここでちょっと紹介します。
『「対話と決断」で成果を生む 話し合いの作法』を読んで
ここでは詳しくは紹介しませんが、『「対話と決断」で成果を生む 話し合いの作法』においては、話し合いには、「対話」・「議論」・「決断」のフェーズがあると述べられています。
そして、対話のフェーズでは、それぞれの意見や経験を持ち寄り、それぞれの意見の違いを楽しむことが求められるが、日本の組織(職場に限らず学校などの教育現場でも)においては、全くこの対話が成立していないと指摘されています。
例えば、会議の場で、その中で一番上の立場の人が意見を述べた後で、参加者の意見を聞くものの、結局誰も発言しないまま、上司の意見が採用されてしまう。
皆さんも、会社の会議などで同じような場面に遭遇したことのある方は多いのではないでしょうか。
中原淳教授は、教授として大学生に対して講義を行い、また様々な企業に対してもコンサルティングを行っている立場から、日本社会がこうした問題を抱えていることを目の当たりにした上で、こうした問題意識から、まずあらゆる人が話し合いの作法を身に付ける必要性を説いておられます。
1on1は文字通り1対1の対話であるのに対し、話し合いは複数人による対話であるという違いはあるものの、先の見通しが立たないこれからの時代において、対話の必要性を説く点で共通する部分があると思い、少し紹介させていただきました。
セミナーを受講して
僕が受講したのは、中原淳教授の「なぜ1on1が失敗するのか?「やらされ1on1」を抜け出すために必要なアクション」というセミナーです。
このセミナーの中で特に印象的だったのが、1on1を導入する際に、マネジメント層にだけ研修などを行ってもうまく行かないというお話です。
要するに、1on1を導入されている企業では、導入に際し、マネージャーに対してのみ、1on1の目的や方法についての研修を実施しているケースが多いと思います。
ですが、1on1も、コミュニケーションの1つであり、マネージャーと部下の両方がいて始めてコミュニケーションが成立するのだから、もう一方の当事者であるメンバーの方も、1on1がどういうものか理解していないとコミュニケーションが成立せず、うまく行くはずがないという趣旨のお話だったと記憶しています。
1on1を導入しているものの、特に部下側が何を話せばいいかがわからず、結局業務連絡に終始してしまうといった事例はよく耳にしますし、セミナーの中でも良くない例として紹介されていましたが、確かに上司側だけ1on1の型を理解していても、部下側は何を求められているのかわからず困ってしまうよなと、とても納得できました。
今後、自分自身が1on1を導入するにあたっても、上司の側が本書で紹介されているような1on1の型を身に付けることが重要である一方、1on1を受ける側とも、そのイメージを一致させておかなければと痛感しました。
まとめ
以上、『部下が自ら成長し、チームが回り出す1on1戦術』について紹介しました。
本書は、タイトルに「戦術」や「対話の技術」という言葉が入っている通り、1on1を実践するための具体的なスキルや型がたくさん紹介されています。
この記事では詳しく紹介しませんでしたが、第3章では、著者が問題点として掲げる「5つの壁」それぞれについて、壁を解消するための1on1の手法が対話例の形で紹介されていて、非常に参考になります。
また、企業の人事部の方など、これから制度として導入することを検討されている方にとっては、実際に1on1を導入している企業のマネージャーや部下の方のリアルな声が紹介されている第4章も、参考になると思います。
以上の通り、本書は、部下との関係性や育成に悩んでいるマネージャーの方が、これから1on1を導入するために、また、既に1on1を行われている方が、自分の1on1のやり方を振り返り、より一層レベルアップするために参考にできる1冊だと思います!
今回の記事が皆さんの参考になれば嬉しいです!
僕たち自身のこと、今までの読書記録については、こちらの記事もご覧ください!
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