はじめに
こんにちは!弁護士兼キャリアコンサルタントのちーたらのパパです。
僕は、関西の法律事務所に勤務する弁護士(60期代)です。
今まで、関西地方のマチ弁事務所で、アソシエイト弁護士・パートナー弁護士としてのキャリアを歩んできました。
そこで、今回の記事では、「マチ弁事務所でのアソシエイト弁護士としての働き方」について、お話ししたいと思います!
※ここでいう「マチ弁事務所」は、地方都市にあるような、離婚・相続・交通事故などの民事事件を取り扱いつつ、企業(多くは中小企業)からの依頼も受けているような事務所をイメージしています。
なお、本記事は、あくまで僕自身の経験・主観に基づいて、僕の所属する法律事務所の勤務形態を前提とした内容ですので、必ずしもすべての法律事務所に当てはまるものではないこと、あらかじめご了承ください。
僕自身のことについては、以下の記事で詳しく紹介していますので、ご興味を持っていただいた方は、こちらもご覧いただければと思います!
そもそもアソシエイト弁護士とは
一般にアソシエイト弁護士とは、「法律事務所に雇用された弁護士」のことを指します。「イソ弁」といわれることもありますね。
アソシエイト弁護士の働き方
程度の差はあると思いますが、一般的なアソシエイトの働き方・仕事の進め方としては、
- 上司に相当するパートナー弁護士(ボス弁)が案件を取ってくる
- ボス弁から仕事を振られる
- アソシエイトが訴状や内容証明郵便などの書面を起案したり、契約書をチェックするなどの作業を行う
- ボス弁がアソシエイトの作成した成果物の内容をチェックする
- 外部(依頼者や裁判所)にアウトプットとして提出する
という流れになります。この点は、概ねどの事務所であっても共通しているのではないかと思います。
パートナーによっては、アソシエイトに丸投げで、ほとんど自分はタッチしないという仕事の進め方をする人もいると聞いていますので、人によっては、ストレスを感じる人もいるかもしれません(この点は本当に良し悪しだと思います)。
これからアソシエイトとして就職される方は、可能であれば、自分のボスとなるパートナーがどういう仕事の進め方をするのか、先輩の弁護士などから聞いておきたいところですね。
アソシエイト弁護士の働き方のメリット・デメリット
以下、完全に僕の主観ではありますが、アソシエイト弁護士として働くことの良い面・悪い面をまとめてみました。
良いところ
まずアソシエイト弁護士の働き方の良いところです。
良いところ①ー安定収入が得られる
アソシエイトとしての一番のメリットは、やはり、給与あるいは業務委託報酬として、安定した収入が得られることだと思います。
僕自身は、パートナーになってから、安定して案件を獲得することができなかったために、売上に波があり苦労した経験から、アソシエイトとして、事務所から安定した収入を得られることは、本当にありがたいことだと身に沁みて感じました…。
なお、事務所によっては、最初からあるいは入所数年後から、歩合制を採用している事務所もあるようですので、事務所に就職される際は、固定収入としていくらの収入が得られるのかについては、あらかじめ確認しておくべきです。
良いところ②ーパートナーに成果物をチェックしてもらえる安心感
2番目のメリットは、自分より経験のあるパートナーに、自分の成果物をチェックしてもらえることだと思います。
特に弁護士になりたての時は、司法試験に合格し、司法修習を修了したとはいえ、実際の案件を処理する上で求められる知識だったり、依頼者にとって有利に事を進めるための勘所のようなものが充分に身についているとは言えません。
また、実際の案件においては、その案件をどう処理していくかという方針を決めるなど、それまでの司法試験受験生・司法修習生時代にはあまり経験することのない「判断」を求められる局面が多くあります。
そのため、僕個人としては、最初のうちは、一人で案件を処理するのは難しいと感じています(もちろん人によっては、弁護士になった時から一人で事務所を構える人もいますので(即独といわれます)、全員が同じように感じるわけではありません)。
この点で、自分よりも経験が豊富なパートナーに自分の成果物をチェックしてもらえたり、わからないことがあったら相談できる環境というのは、大きなメリットの1つになると思います。
良いところ③ー様々な案件を経験できる
3番目のメリットは、様々な案件を経験できることが挙げられると思います。
上述の通り、アソシエイトは、基本的にパートナーが取ってきた案件を処理することになります。
パートナーは、アソシエイトよりも数年から数十年長く経験を積んでいますので、アソシエイトでは簡単には獲得できないような大企業などが顧問先だったり、そうでなくても多数の依頼者を抱えていることが多いと思います。
そうなると、おのずと、アソシエイトにも、様々な案件が舞い込んでくることになりますので、様々な分野の経験を積むことができる可能性が高いといえます。
特にアソシエイトとしてまだ経験がないうちは、企業の顧客はつきにくいように感じていますので(若くても営業で多数の顧問を抱えている方もいらっしゃいますが)、パートナーの案件の中で様々な経験を積むことができることは、大きなメリットになると思います。
【新人の場合】良いところ④ー同期がいる心強さ
なお、新人弁護士として法律事務所に就職する場合のメリットとして、事務所によりますが、同じタイミングで入所する同期がいるということも、メリットの一つに挙げられると思います。
マチ弁事務所の場合、新人弁護士は1人しか採用しないという事務所も多いですが、事務所やタイミングによっては、2名以上の新人を採用するところもあります。
そういう事務所に入所する場合、やはり同期がいる心強さはあると感じます。
ただ、同期がいることには一長一短あるというのもまた事実です。
気軽に相談ができたり、一緒に飲みに行ってストレスを解消したりというメリットがある一方で、どうしても比較されてしまったり、そもそも性格が合わない同期だった場合は却ってストレスになってしまうなどのデメリットもあるなぁと思います(この点、僕は同期に恵まれたので本当によかったなと思っています)。
悪いところ
次に、アソシエイト弁護士の働き方の悪いところです。
悪いところ①ー勤務時間が長い
これに対して、アソシエイト弁護士の働き方のデメリットの一つは、やはり、勤務時間が長いことだと思います。
この点は、事務所の労働環境によるため、一概に言うことはできませんが、アソシエイトの働き方が、基本的には、パートナーの指示の下、パートナーの案件をやることですので、どうしても、自分の意思では時間が調整できず、勤務時間が長くなる傾向はあるように思います。
僕は直接経験したことがないのでわかりませんが、5大事務所と呼ばれる東京の大手の企業法務系の事務所では、深夜・朝方まで働いているアソシエイトも多いという話はよく耳にします。
マチ弁事務所でも、そこまでではないものの、夜遅くまで働かないと案件を処理できない場面はあると、僕自身の経験からも感じています。
悪いところ②ーパートナーの方針に従わなければならない
2つ目のデメリットは、パートナーの方針に従わなければならないことだと思います。
アソシエイトは、上述の通り、パートナーが取ってきた案件に対応することになるのが通常かと思います。
そうすると、依頼者は当然パートナーを頼って依頼してきていますし、パートナーの側も自分が責任を持つと考えていますので、案件処理の方針についても、パートナーが最終判断するケースが多いのではないかと思います。
そのため、パートナーの方針とアソシエイトの考えた方針が合わない場合もありますし、また、(事務所によるかもしれませんが)パートナーがOKを出さないと案件を進められないといういう事態が生じることもあります。
こうなってくると、案件を処理する中でストレスを感じる場面が増えてくると感じています。
特にこの点は、アソシエイトとして数年経験を積んだころに感じる傾向があるように思います。
僕自身の経験としても、アソシエイトとして働き始めた当初は特に何も感じなかった(むしろ有り難いと感じていた)のですが、数年勤務して、弁護士としての自我・スタンスのようなものが芽生えてくると、パートナーと方針が合わなかったり、パートナーの指示・承認を待ってから対応するのが面倒だと感じるようになりました。
1つの事務所に数年勤務した後、独立したり、パートナーになったりというキャリアを歩む方が多いのも、この点が大きな理由の一つなのかなと感じています。
悪いところ③ー主体性を持ちにくい
3つ目は、主体性を持ちにくい、つまり、アソシエイトが自分の案件としての意識をもって対応することが難しいという点があると感じています。
上述の通り、アソシエイトがパートナーの指示の下でパートナーの案件を処理するという働き方であるため、どうしても、「パートナーの依頼者だし」「自分の案件じゃない」と、どこか他人事のように感じてしまう面があるように感じています。
そうなると、明確に意識しているかどうかは別として、仕事のクオリティが下がってしまったり、さらには案件を放置してしまったりということにつながってしまうケースもあるように思います。
もっとも、この点は、僕自身の経験から感じるところであるため、僕個人のモチベーションの問題、あるいは、事務所の風土などにもよるのかもしれません。
アソシエイトであるかどうかにかかわらず、主体性をもって、案件を処理されている方もいらっしゃるとは思いますので、特にこの点については必ずしも一般化できるものではないとご理解いただければと思います。
おわりに
以上、今回の記事では、マチ弁事務所でのアソシエイト弁護士としての働き方について、お話ししました。
一口にマチ弁事務所といっても、いろいろな規模・特徴のある事務所がありますので、どこまで参考にできるかわかりませんが、地方都市の小~中規模の法律事務所のアソシエイト弁護士の働き方の一つのモデルケースとご理解いただけると幸いです。
法律事務所への就職活動中の司法修習生・若手弁護士の方が、法律事務所選びや弁護士の働き方を知る上で参考になれば嬉しい限りです!
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